サッカーコラム 「優れたゴールキーパーとは」



「優れたゴールキーパーとは」
 No.10 2005/4/22


チャンピオンズリーグも佳境に入り、0:0で終わる試合がほとんど
ないなど白熱した戦いが繰り広げられている。
そこで今回は、ゴールを守る最後の砦であるゴールキーパーについて
考えてみたい。
特に欧州では人気が高く、女性からのウケも良いと言われるこのポジ
ションは確かに特殊であり、数あるサッカーのポジションの中でも必
要とされる能力や役割が他とはかなり異なる。それでは、良いゴール
キーパーとはどのようなものであろうか。

「優れたキーパー」といってすぐに思い浮かぶのは、類まれな瞬発力
と反射神経ではないだろうか。
ゴール枠内に飛ぶ際どいシュートを間一髪のところで弾き出す。キー
パーのファインセーブは素晴らしいゴールと同じくらい美しく、1点
を奪う(守る)という意味では、その価値もまったく同じものである。
そしてその意味では、瞬発力と反射神経は当然キーパーの大事な要素
となる。少なくともそれらが一流でなければ、それこそトップチーム
の正キーパーなどは務まらない。
しかし、キーパーの能力というのは実はそれだけではない。

観客が少ない中で、要するに選手達の声が良く聞こえる状況でサッカ
ーを見た事がある人ならお分かりと思うが、キーパーというのは試合
中ずっと声を出し続けている。その頻度はもちろん人によって違うが、
よほど実績と実力が回りに認知されている選手でない限り、声を出さ
ないキーパーはただの二流選手である。
その目的は、主にディフェンスラインを中心としたフィールドプレイ
ヤー達にポジショニングなどの指示を出すことであり、戦況を最も客
観的に見られる位置で駒(=選手)を的確な位置に運ぶことなのだ。
時にそれはFWの選手にも及び、ゲーム内監督とも呼ばれ野球のキ
ャッチャーにも例えられる。

よって、危険なスペースを消したり、シュートコースを狭めたりする
ことで相手チームの攻撃を未然に防ぐということもキーパーの重要な
能力であり、一見ただ正面に放たれたシュートのように見えても、そ
のような指示があったからこその結果である場合もあるのだ。

「優れたキーパー」というのは必ずしも素晴らしい身体能力で好セー
ブを連発する選手という訳ではない。それを見極めるためには試合を
トータルで見る必要があるのだ。
それはテレビで見ていても中々分からない。是非間近で、スタジアム
で見て確認していただきたいことである。

蛇足だが、キーパーといえばやはり大柄な選手が向いていると言われ
る。体全体を壁としてゴール全体のより広い範囲を守らなければいけ
ないことを考えれば、それも当然といえる。
しかし大きくなければ出来ないということはない。数年前までサッカ
ー強豪国、メキシコの正キーパーを務めていたカンポスという選手は
身長わずか168cm(実際にはもっと小さかったのではないかとも言われ
る)であった。しかし、それこそ人並み外れたジャンプ力と反射神経
でそのハンデを補った。彼は「身長が低くてもキーパーは出来るんだ」
という大きな希望を子供達に与えた。
ただ、その身体能力はそれこそ尋常でなかった。彼はFWもこなし、
1シーズンでチーム最多となる24ゴールをあげたこともある。
そういう意味では、身長云々以前に到底真似出来ることではないのか
もしれないが。





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