サッカーコラム 「ロナウジーニョという名の芸術」



「ロナウジーニョという名の芸術」
 No.4 2005/2/10


もしあなたがプロのスポーツ選手で、しかも世界中で知らぬ人がないほ
ど有名で実力も申し分なく、サッカースペイン一部リーグのバルセロナ
というトップチームで背番号「10」を背負う人間だとして、週2回の
ペースで試合をこなしている厳しい状態の時に、移動中の飛行機の機内
で何をしているか想像してみて頂きたい。
私も含め、ほとんどの人が眠るか休んでいると答えるのではないだろう
か。数々の激しい戦いで疲れた体を癒すため、そしてまたすぐに訪れる
新たな真剣勝負のために。そしてそれも決して誤った選択だとは思えな
い。
しかし、彼は違う。通路でリフティングをしているのだそうだ。
ひと時でもボールに触れていたいから、ボールを蹴ることが楽しくてた
まらないからだそうだ。

自分の目で見たわけでもないのでその真偽は不明だが、確かにあのプレ
イを見ているとうなずける。そして、これは世の中の全てに通じる事な
のかもしれないが、やはりそういう人がトップに立てるんだろうなとい
うこと、それに自分自身の凡庸を痛感する。

「ロナウジーニョ+ボール=芸術」と言われるほど、彼のプレイは美し
い。彼がボールを持つと次に何をしてくれるのだろうと期待を持ち、そ
して多くの場合にこちらの予想を越えたことをしてくれる。

彼は試合中、ほとんど笑顔である。それは失敗したときの苦笑いでもな
く、同じブラジル代表のカフーのように体のリズムを無意識に調整する
ものとも違い、恐らく本当にただ楽しいからというだけなのだろう。
他の選手だったら「へらへらしている」と非難されるかもしれない。し
かし、彼が非難されることはない。
それはたとえ失敗しても「彼なら仕方ない」と思えるからだし、「次は
何をしてくれるのだろうか」と思うからだし「本当は何がやりたかった
のだろう?」とまで考えてしまうからではないだろうか。

間違いなく、彼は今世界で最も高度なテクニックを有する選手だろう。
一度で良いから生で観戦してみたいものである。

※2005/4/28 改訂




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