サッカーコラム 「日本が生んだ最高の才能」



「日本が生んだ最高の才能」
 No.7 2005/2/21


表題のような評価をされた選手とは一体誰だと思われますか?
中田?中村?・・・もしかして大黒?
こういったことは個人が感じる事であり、特に正解というのはないのかも
しれませんが、以前このような形容詞をもって評価された選手とは、現在
オランダ一部リーグ、フェイエノールトで活躍している小野伸二選手です。

超絶の部類に入る巧みなボールコントロール、左右両の足を完璧に使いこ
なす技術(利き足でない左足であっさりとコーナーキックを蹴ったりしま
すね)、状況判断の的確さや決定力も併せ持ち、何と言っても「ベルベッ
ト・パス」と評されるあの柔らかいパスは彼の最大の特徴です。同じ代表
の中田英が「このタイミングで走れ」という矢のような鋭いパスだとした
ら、彼のパスは明らかに相手に合わせた「優しい」パスです。それは彼の
性格をはっきりと証明しているような気がします。

盟友である同じ日本代表の稲本は、彼に出会って「こいつを超える事は出
来ない」と今までやっていたトップ下を諦め、以前所属していた浦和レッ
ズがJ2に降格した当時チームにいた外国人選手は「オノのような選手を
日本の二部リーグでプレイさせるのは、日本人の恥だ」とまで言わしめた
男、それが彼、小野伸二です。

そんな『日本が生んだ最高の才能』がオランダに渡って早3年が過ぎまし
た。彼はフェイエノールトという名門チームで、オランダでは深い意味を
もつ「14」という番号を背負い、チームの中心として目覚しい活躍をし
てきました。特にUEFAカップ優勝という栄光はサッカー選手にとって
何度とないものであり、同じ経験ができる日本人プレイヤーは二度と現れ
ないかもしれません。

しかし、彼は本当にフェイエノールトに骨を埋めるつもりなのでしょうか。

確かに名門中の名門チームではあります。しかしオランダリーグが欧州で
は少し格が下がるリーグであることは明白な事実です。それは、オランダ
代表のエース達のほとんどが他国のリーグに所属している事からも分かり
ます。
ここで私個人のわがままを書くことを許されるのなら、彼を是非ともエール
・ディビジ以外で見たいと思うのです。むしろ、彼にはそうする義務があ
るのではないかと思うのです。
中田や中村がセリエAのプロビンチャで苦しんでいます。大久保が2部落
ちに瀕するチームを救おうとリーガで奮闘しています。小野伸二はオラン
ダの名門で「王様」として君臨していて、それ自体とてつもないことでは
ありますが、敢えて言わせてもらえば、彼には「それだけ」で終わって欲
しくないのです。
彼がプレミア・リーグで観衆を総立ちにさせている姿、セリエAで強固な
ディフェンスラインを切り裂くパスを出す姿、リーガ・エスパニョーラで
完全に試合をコントロールしている姿・・・その全てがまったく想像できない
姿ではありません。むしろ、その環境さえ整えば本当にそうなるのではな
いかと震えさせてくれます。
所属するクラブを選択するというのは一般社会に照らせば会社を選ぶよう
なもので、人生に関わる重大な事です。そしてレベルの高さだけがその選
定基準の全てではなく、特に家族などがいれば、街自体の過ごしやすさな
ども大変重要な事項です。
それを全て承知の上で、それでも彼がそれを臨まないのであれば、我々日
本人のその願いは封印するべきでしょう。

奇しくもその彼が今、苦境に立たされています。怪我による長期離脱、そ
してそこからくるスランプ・・・以前の彼を知る地元のファンやマスコミは、
彼の事をバッシングすることもあるようです。
しかし、我々は彼の本当の姿を知っています。彼が世界トップクラスのテ
クニックを有するMFであることを。

そもそも、彼が下す決断に我々がとやかく言う権利はありません。「日本
最高の才能」が今後どんな道を選ぶのか。彼自身が下した決断を支持し、
静かに見守っていくことが我々に出来るすべてなのでしょう。





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