サッカーコラム 「巨星が消えた日 ガブリエル・バティストゥータ引退」



「巨星が消えた日 ガブリエル・バティストゥータ引退」
 No.8 2005/3/18


また一つの時代が終わった。サッカー界から巨星が消えた。
母国アルゼンチンで培った彼の実力は、イタリアで花開いた。リバー
・プレート、ボカ・ジュニアーズなどの華々しい経歴を経た彼は、
91年、財政難であのロベルト・バッジョを放出したフィオレンティー
ナにその救世主となるべくやって来た。そしてその期待に見事応え、
2シーズンで29ゴールという大活躍。同時期に絶頂期であったルイ・
コスタと共に、隆盛を極めた。
チームがセリエBに転落した時も、多くの人が移籍を予想したにも関
わらず彼はチームに残留。「ヴィオラ」サポーターからの信頼をより
厚いものとした。
すぐにAに戻った94-95シーズンには得点王を獲得。同じシーズン
に11試合連続ゴールというセリエA記録を打ち立てた。
そして2000年、9年間所属していたフィオレンティーナからローマへ
移籍。トッティ、中田英寿らと共に念願のスクデットを獲得、自身も
20ゴールという活躍を見せた。
一方であのアルゼンチンの神様、マラドーナが去った代表を救ったの
も彼であった。ワールドカップには94年から3大会連続で出場、98年の
フランス大会1次リーグの日本戦で決勝ゴールを奪った選手として記憶
に残っている方も多いだろう。
代表として78試合で56得点を挙げ、これは同国史上最多記録である。
ただ、犬猿の仲といわれたライバルのクレスポとの夢のツートップは
結局かなわなかった。
その後はインテルなどに移籍するも振るわず、03年にカタールのアル
・アラビというチームに移籍。初年は25ゴールをあげるも今季は不
調に悩まされチームを解雇された。
ワールドカップでの優勝、そして念願といわれたプレミアでのプレイ
も最後までかなわず、彼はピッチを去る事となった。

ガブリエル・バティストゥータという選手の何が凄かったかは、その
プレイを見れば一目瞭然である。
細身であるにもかかわらず、しなやかな体からくる桁違いのパワー。
フリーキックの威力は現役選手のロベルト・カルロスと同レベルで
あったし、正確さはそれ以上のものがあった。
長身と強靭なバネを活かしたヘディングは、どんなに大きなディフェ
ンダーでも競り勝つことが出来なかった。
そして何よりも、彼は点を取った。とにかくとりまくった。カミソリ
のような切れ味とその凄まじいパワー。ストライカーという言葉が彼
以上に似合う選手はいなかった。

13日、母国アルゼンチンの新聞紙上で彼は「これは完全なる引退です。
サッカー人生の成功を助けてくれたすべての人に感謝したい」という
声明文を発表した。今後は、一番の思い出が詰まったクラブである
フィオレンティーナの役員となる事が目標だという。
幼い頃非常に頭がよく、サッカー選手と同時に医者を目指していたと
いう彼なら、きっとサッカー界を良くする頭脳になってくれるに違い
ない。
サッカーの歴史に残る選手がまた一人、現役を退いた。それは非常に
寂しい事に違いない。しかし、誰にでもいつかは来るもの。我々は彼
の今後の人生を応援していこう。





トップページ表示