サッカーコラム 「サッカーと人種差別」



「サッカーと人種差別」
 No.9 2005/3/22


 今から約3週間前、現地時間で3月2日、スペインのレアル・マドリ
ー対デポルティボの試合中、デポルのサポーターがロベルト・カルロス
に対し有色人種を差別するような発言を連呼し、遂には主審が試合を中
断するという騒ぎが起きた。この試合はWOWOWでも放送されたので、
見ていた方も多かったのではないだろうか。他にチャンピオンズリーグ
第二戦、チェルシーvsバルセロナの試合でも、バルセロナのサミュエル・
エトーが、試合中チェルシーのサポーターに延々と暴言を浴びせ続けら
れたと証言している。
 この問題は、数ヶ月前アーセナルのアンリが試合中に同じように差別
発言を受けた事に端を発しており、後に彼はスポーツ界における人種差
別の撤廃に関するイメージアスリートになった。

 我々日本人には馴染みが薄いが、人種差別というのはご存知の通りア
メリカや欧州の歴史に様々な暗い影を落とし、今でも深く深く残ってい
る問題のひとつである。あまりにもデリケートかつ難解な問題であるの
で、それそのものについてここで語る事はしない。
 ただ、私自身は欧州に行ったことも現地でサッカーを見た事もないの
で断言は出来ないが、一昔前はこういった話をあまり聞かなかったよう
な気がするのだが、気のせいだろうか。
 こんな言い方をすると語弊があるかもしれないが、人種差別という問
題は何百年も続いているものなのだから、同じく長い歴史を持つサッカ
ーの試合でそのようなことは充分が起こりうる可能性があることで、正
直「何故今となって表面化してきたのだろう?」という感じが否めない。
昔からあったのに、やっと今頃になってマスコミや協会が問題視し始め
たとでもいうのだろうか。

 ここからはあくまで私の推論でしかないが、少し前までは本当にその
ような問題が少なかったのではないかと思うのである。
 もちろんあるにはあったのだろうし、それに耐えてきた選手達の苦し
みは想像に難くない。マラドーナやジョージ・ウェアの例を出すまでも
なく、サッカー界では様々な黒人選手が活躍してきた。では何故最近に
なって表面化しだした(と考える)のか。原因は簡単。それは黒人選手
の活躍である。
 先程挙げたロベルト・カルロスやアンリ、エトー以外にも、ロナウド、
ロナウジーニョ、マルティンス、ビエラなどここ最近の黒人選手の活躍
は目覚しいものがある。そして彼らの、サッカー選手としてのテクニッ
ク云々の前に、完全に人間離れした身体能力はもはや反則気味だ。
 世界のサッカー界でアフリカ勢が台頭してきた頃、特に欧州のサッカ
ー関係者は彼らに戦術というものが身についたら自分たちの牙城がいつ
か崩れるのではないかと恐怖心を抱いた。そして実際、欧州の有力クラ
ブやワールドカップなどの世界大会でも、アフリカ勢や黒人選手の占め
る割合と重要性は日増しに高まるばかりである。
 一般の人々、要するに白人達も、それに恐怖心を抱き始めたのではな
いだろうか。陸上の短距離走のように、サッカー選手が全員黒人で形成
される時代が来てしまうのではないかと。

 これからのサッカー界がどのようになるかは分からない。白人でも黄
色人種でも優れた選手は大勢いるし、そもそも人種で分ける事に意味は
ない。ただ、欧米のスポーツ界でこういった人種差別報道を見る度に、
白人たちのひがみのように思えて仕方がないのだが。





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